動物管理センターの話。
皆様、こんにちは^ ^。
本日は昨日に引き続き、保健所の話をしたいと思います。
今日は画像が一切ありません。私の記憶から消したいけど消えない思い出に、しばしお付き合い下さいm(_ _)m。
あれはまだ私が動物病院に勤務していた時の事です。
その日は仕事が休みで、家の前で愛車を洗車していました。
私の家の前はスクールゾーンになっていて、下校時間とあってたくさんの小学生が歩いていました。
洗車をする私の視界の片隅に映ったのは、小さな黒い仔犬を抱いた小学生。
ん?1人……2人……3人……
確認できたのは4人でした。
捨て犬か。
連れ帰った子達の家族が快く仔犬を迎え入れたと信じ、幸せになれますように。
なんて思いながら車を拭いていると、背後から「お前、それ飼えるのか?お母さんに怒られるぞ」という男の子の声が聞こえてきました。
振り向くと、そこには数人の小学生に囲まれた男の子が、仔犬を抱えて半ベソ状態で首を横に振っていました。
「その犬、どうしたの?」
子供達に声をかけました。
学校のそばには公園があり、6匹の仔犬がそこに捨てられていたそうです。
「家で飼えるの?」
そう聞くと、男の子は困ったように俯いてしまいました。
う〜ん……。
私も子供の頃、拾ったと言っては犬やら猫やらを連れて帰り、親を困らせたものでした。
うちにはロンがいる。シルビアもいる。だが、私ももう大人だ。
…………1匹増えたところで、もうなにも言うまい!!
瞬時に判断した私は、すぐに男の子に「その子、くれる??」と言いました。
仔犬を受け取り、抱き上げる。
小さくて可愛いなぁ。大人しいなぁ。
家の中にいた母に仔犬を見せると、案の定、子供の頃とは違う反応で、そのまま家に迎えることが出来ました。
その時、父は仕事でいなかったのですが、仕事が忙しく夜も帰りが遅かったので、何日か経った頃に「いつ増えた?!」って言われるだけだと、母とも話しました。
仔犬をすぐさまロンの元に連れて行き、仔犬を近付ける。
ロンも仔犬も鼻をつき合わせご挨拶。
シルビアを連れて来た時もロンは優しかったので心配はなにもありませんでした。
ですが、仔犬を地面に置いた時に異常に気付きました。
立てない。座り方がおかしい。
すぐに勤務していた動物病院に連れて行きました。
「レントゲン撮るか」
そこから先は、もうショックが大きくて断片的にしか覚えていません。
ただ、レントゲン画像が物凄いことになっていたこと。股関節と大腿部の粉砕骨折です。
粉砕骨折なんて生ぬるいものではありませんでした。完全に原形をとどめていない。これをどうやって治す?
動物病院に勤めているとはいえ私は獣医学には全くの素人です。骨がこの状態なら神経はどうなっているか。排泄はできるのか。下半身麻痺なのか。最悪、断脚か。現実的な想像などできませんでした。
「カミさん(私の愛称です)、これはそこらの動物病院じゃどうにもできない。手術をするにしても、設備がもっと充実していて手も多い(獣医の手)所で診てもらった方がいい」
と、北大獣医病院での診察を打診されました。
そこからは現実的な話内容です。
北大獣医病院への紹介状は書いてもらえるとして、治療費はどの程度になるか。
想像を絶する金額です。1度の診察で諭吉さんが確実に1人居なくなります。
入院の期間は?
退院後の通院はどの程度か。仕事をしつつ通えるのか。
どんな診断でどういう治療になるかはわかりませんが、院長先生と同期入社のA先生が言うには、私の収入では非常に厳しいということ。
治療後の生活もあります。
自分で排泄できなかったら、看護が必要になり、つきっきりの生活になります。
仕事をしつつ、この子がこの世を去るまで何年かはわかりませんが、世話をしていけるのか。
様々な事を先生に聞かれました。
その時、本当に絶望しかありませんでした。
頭の片隅に「動物管理センター」が浮かびます。
帰り際、私の思いを察したのか、A先生がコソッと私に言いました。
「滅多にいない症例を抱えたペットが保健所に来ると、北大とか酪農大学とかが引き取って練習として手術する事があるぞ。あくまでも練習台だけど、手術が終わって学生が引き取る事もある」
本当かどうかはわかりません。
動物管理センター選択への罪悪感を少しでも和らげるために、A先生が話を作ったのかもしれません。
家に帰り、母に言いました。夜、父の帰りを待って父にも相談しました。
結果は……致し方ない……。
翌週、仕事が休みの日に動物管理センターに足を運びました。
前日からずっと泣きっぱなしで目は腫れ放題。とても見せられた顔ではなかったので、黒いサングラスで目を隠して行きました。
「その犬、捨てるの」
受付の年配の女性が言った冷たい一言に一気に涙が溢れて、泣きながら事情を説明しました。
話を聞くうちに受付の女性の冷たい態度も一変し、管理センターにいた方全員が優しく声をかけてくれました。
でも、私はホントにとんでもない事をしちゃったんですよ。
犬が大好き!と言いながら、こういう仕事をしながら、実際は鬼のような行いをしてしまったんですよ。
この話を知っているのは数人の友人だけ。
何故捨てる?!と怒りをあらわにできる立場じゃないですよね……。
こういう仕事をしつつ、こんな経験を公にしていいのだろうか?
とても悩みましたが、思い切って書かせて頂きました。
助けてあげられなくて本当にごめんね。
ずっと心に引っかかったままでいます……。
見苦しい記事、失礼いたしました。
ペットカットしるびあ